過緊張性発声障害は「発音の仕方」に原因があるかもしれません
2022/12/08
過緊張性発声障害 は、 声質の変化が特徴的に現れる発声障害の一種です。
声が潰れた「苦しそうな」声色に変化します。
通常の声質だったのが突然「苦しそうな声質」に変化したり、また戻ったりと、浮動的な状態になるのも特徴のひとつです。
この声質の変化は、声帯が過度に絞まった(過内転) 状態を表していますが、なぜこのような事が起きてしまうのでしょう?
身体的には、「喉頭(のど仏)の位置」 の変化が関与しています。
重症化すればするほど、「喉頭(のど仏)が引っ込んだ」状態に、より固定化されます。
舌根が引っ込む(下がる)方向に動く、という事です。
また、喉頭全体が弾くように動く様子が見られることがあります。
この「喉頭の位置の変化」は、それだけで発声時の呼気の流れを妨げます。
すると、 喉頭内の空間の圧力が高まり、それによって 声帯が絞まりすぎてしまうのです。
裏を返せば、「ことば」にしていく際、
喉頭内の圧力を高くしたほうが話しやすかったために、「喉頭の位置の変化」が起きて徐々にそのように身体が変化していったとも言えます。
過緊張性発声障害 は 発音の仕方(構音) が大きく関係していると思われます。
例えば、
「サ行」の「S」摩擦音の構音(子音付加)は、
舌の前方上面が硬口蓋に接着することで、呼気の流れを急激に狭め「摩擦音」となります。
この時、前歯と下歯を合わせた部分のすぐ内側に舌先が来ており、口腔内圧力が高まります。
すると、呼気のヘッドスピードは上がり、次々と呼気は喉頭から口腔へとスムーズに流れます。
しかし、口腔内圧力が弱いと、呼気が喉頭から口腔へとスムーズに流れないので、
喉頭内の圧力を一瞬高めてから押し出すように変化せざるを得なくなるのです。
結果、喉頭摩擦音(喉頭破裂音) のような構音になるというわけです。
また、喉頭内は、声帯というヒダが開閉することで、上下の部屋に分かれます。
通常はこの声門の上下の部屋の圧力差だけで、声帯は反射的に開閉します。
そして声帯粘膜が波状運動を起こして粗密波を起こしているのです。
しかし喉頭内全体が圧力が高いと、この声門の上下の部屋の圧力差が生まれないので、声帯を力づくで閉めなくてはならなくなります。
また、固めた声帯がこすり合わされると、もはや金属音のようになります。
このように、過緊張性発声障害は 「発音の仕方」が正しくないことに起因し、身体がラクなほうに傾いてバランスを取ろうとした結果とも考えられるのです。