機能性発声障害は「思い込み」で頑張るほど悪化する
2022/11/10
機能性発声障害とは、声帯ポリープや声帯結節などが無く、器質的な病変がないのに「声が出にくい」症状があることを指します。
痙攣性発声障害や、過緊張性発声障害 もこの機能性発声障害の一種といえます。
また、声質の変化を伴うこともあります。「声が割れる」「声がかすれる」、突然「声が揺れる」「声が抜ける」
「苦しそうな声質に変わる」などの症状です。
または、「タ行」「サ行」の連続になると言いにくい、「イの段」の音韻が言いづらい、などの特定のことばのみが言いにくい、
などの症状がある場合も、機能性発声障害のひとつといえるでしょう。
通常は、「息が声に変化する」大元の土台部分もスムーズで、
さらに「ことばをつける」(舌や軟口蓋が動く)という「構音」の部分も努力は要りません。
この両者は並列的に、連続的に音韻としてつながり、語彙、文節、文、というふうに連結してゆきます。
この時何の「せめぎあい」もありません。呼吸の状態も苦しくありません。
発声障害は、まず「息が声に変換」される土台部分に問題が生じることから始まります。いわゆる
「息漏れ」です。「息漏れ」は、声帯の粘膜波動によって空気を「音」に変換する効率が落ちたことを示しています。
これは声帯に力みが加えられているために起こるのです。
この大元の声の部分にわずかな「息漏れ」が起こるようになることで、
舌上面や口唇などの狭めで作る「子音」を付加する構音の際、
微細な喉頭腔や咽頭内での圧力が、今までとは変化してくるのです。
すると、「子音を作る位置」を「声にする」位置に近づけるようになり、「喉の奥」に焦点が引っ込んでゆくのです。
次第に、「息を声にする」ことと、「ことばにする」というふたつの部分が干渉しあうようになります。
これが「言いにくさ」です。
まずは、「息を声に変換する部分」である、「息漏れ」のない声にすることが先決です。
よく勘違いされやすいのが、声にするためには「息を吐く」と思われていることです。
この「息を吐く」ことが、声帯の開閉に大きな矛盾を来たすのですが、これを意識的に良かれとやることで
かえって「息漏れ」が増大します。
また、「ことばにする」ため「息漏れ」がしないように「呼吸のコントロール」まで行うようになると、
事態はもっと悪化します。胸や喉頭を固定し「息を止め」た感じになると過緊張気味の声質になります。
「お腹に力を入れて」、等とよく聞きますが、これを本当に身体がするとそれだけで「喉頭の力み」になります。
すると生理的に胸や喉頭が緩んだ時に起こる呼気(出てゆく息)が感じられなくなるのです。
このように、世間でよく発声に関して言われていることを良かれと思い込み、自己流で頑張っていると、かえって機能性発声障害のレベルは悪化します。
「声質が変化」したら、「何か言いづらい」「何か息苦しい」と感じたら、早めに発声障害改善専門のボイストレーニングを検討しましょう。
そして、医療機関や一般の歌唱系教室では「まずは腹式呼吸が大事です」というトレーニングになりがちです。
これでは遠回りになってしまうことが多いので、一刻も早く発声障害改善専門のボイストレーニングを検討しましょう。