歌唱の発声障害は「中音域不安定さ」「息漏れ」「音程の不安定さ」などに現れる
2022/09/28
あれほどラクに歌えていたのに、、、、と歌唱の発声障害を発症した人たちは皆口にします。
何も考えなくても自由に歌えていた、高音域もラクに出ていた、何時間歌っても平気だった、、、
音楽活動も精力的に行い、「歌うこと」が得意だった人が 発声障害 に陥ることがあります。
「歌える」人ほど陥りがちな誘惑があります。
もっと太い声にしたい
もう少し低音域を鳴らしてみよう
もっと地声を鍛えよう
もっとお腹から声を出してみよう
こういった考えから、「本来の声」の響きを失わせるような力が発生するのです。
より声帯を強く閉め、息を沢山吐くようになります。
強く閉めた声帯は、そば鳴りがして自分自身に聞こえる声量が「大きく」なりますから、良い声と勘違いしやすいのです。
日本人にはどうしても 「歌舞伎」や「狂言」で聞かれるような野太い声のイメージの、
「お腹から声を出すことが良い」、という文化が根強くあります。
顔面共鳴で声を響かせる感覚が薄いのです。
この「お腹から」という表現を、文字通りお腹を動かして息を吐くことだと勘違いしている人が多いのには驚かされます。
吸気、呼気の量がどんどん過剰になり、息で押しながら声帯も過剰に閉めてゆくという「悪循環」。
そして問題なのは、呼気調節機能の土台が出来ていないと、声帯を生理的範囲以上に絞めたところで
音程を取らざるを得なくなります。
すると、高音域とすごく低い音域などは閉めれば出てしまいますが、反面、その中間の音域の調節が難しくなってしまうのは当然です。
中音域の音程が不安定になり、声がぐらつく
息漏れがあって、たくさんブレスをしても息が続かない
などは歌唱時特有の発声障害の症状です。
また、歌唱時の特定のことばの発音によって「息が鼻に抜ける」といった症状もよく見られます。
これも、そもそもの声帯閉鎖が強すぎるために起こることです。
音の高さを、音程を、メロディーラインを、歌詞を、全て大きな力で行っていては、「力の上塗り」になってしまいます。
実は、発声の根本を見直してみることは、いつどんな状態からでも可能です。
歌唱はもっとも上位のレベルで、発声の総合された反映であるために、「最も繊細な部分」が見落とされがちです。
「ひたすら息を吐く」「喉頭を固める」「お腹に力を入れる」といった力の上塗りではもう対処できないと思ったら、
「声になる最も最小の部分」を見直すことです。
すると、
まず、息を声にする、という最小の出来事が理解できます。
そして声の高さをなめらかに推移させる、という事がどういうことかが分るでしょう。
また、正しい共鳴になれば、すぐさま声が口腔へ入って来る感覚がつかめます。
発声の最小の部分が改善されることで、歌唱という上位のレベルに反映されるのです。