自分の発声の悪習慣を理解し、新しい「感覚」を知ることが発声改善の第一歩
2022/01/21
「発声障害」の発症は、発声器官に過剰に力をかけてきたことが原因です。
(発声器官とは 舌や舌根、下顎や、咽頭(軟口蓋)、喉頭(声帯)などです。)
ハッキリ喋ろう、もっときちんと話そう(歌おう)、というような意識、または無意識下の意図により
頑張った発声を繰り返すことで、発声器官に力みを入れながらの発声に慣れてゆきます。
発声は皆、自分なりの「感覚」だけを頼りに行っています。
発声は、「脳神経(脳から直接出る末梢神経)」が支配する領域の総合運動です。
この脳神経の領域にある機能とは、肩から上の動き、首や顔、耳、口(喉)などの感覚であり、五感を感じとるための器官が集まっていますね。
そして、この「感覚」とは、日々の習慣性によって変わってゆく ものなのです。
発声器官は、すでにその力み方に慣れてしまっているせいで、
もはや「力んでいる」感覚が自分では分かりづらいところが、発声障害の厄介なところです。
むしろその「力み」が無いと、「いつも通り」でない違和感を感じてしまうようになるのが
習慣のこわさです。
「第一声めが出づらい」「声がつまる」「声がふるえる」「声が安定しない」などの「発声障害の発症」を自覚し、
耳鼻科クリニック等で「声帯の見た目に異常がない」と言われた方は、
「原因が分からない」、「脳の病気かもしれない」「神経系の異常かも」、とはじめは思われたかもしれません。
しかし、
機能的な「発声障害」は、発声に関わる器官に力を入れてきた人にしか発症しません。
自分自身の「発声の癖」により行ってきたことの累計的な数字的回帰であり、「感覚」の習慣性の問題であり、
脳神経の問題であることは極めて稀です。
昔からよく発声時に「息をたっぷりのせるように」、「息をたくさん吐く」「お腹に力を入れる」というような、
よく聞くフレーズを身体が繰り返していくと、実際に声帯が強く閉まるので力強い鳴りが生まれ、始めは
心地よく感じられたかもしれません。
次第にそれに慣れてくると、「まだ足りない、もっと!」と脳は感じ、どんどん運動が増大してゆくのです。
発声は、初めのうちは頑張れば頑張るほど運動が増大し、自分の思う通りにできている感覚がありますが、
発声器官は負担をかけ過ぎると、器官同士の力バランスが崩れ、連携がうまくいかなくなります。
こうした悪循環が始まってゆくと、発声の「やりにくさ」を感じることになるのです。
頑張っているのに、思うところに届かない、という感覚です。
これは、人間の持っている「感覚器」の特徴を表しています。
「感覚」は慣らされることで、どんどん強くしないと感じられなくなるものです。
濃い味の塩分多めのものを多く食べ続けていた「味覚」には、薄味の食べものは物足りなく感じます。
薄味の人の味覚からすれば、ビックリするくらいしょっぱくても、濃い味の人にはそうでないと物足りなく感じます。
「聴覚」という感覚もそうです。
いつもヘッドフォンで大音量で音楽などを聞いていると、知らないうちに聴覚神経がすり減り、気づいた時には小さな音が聞こえなくなる「難聴」になってしまうこともあります。
このように、「感覚」は、大きなレベルに慣らされてしまうと「もっともっと」と、エスカレートしてむしろ鈍感になってゆくのです。
「発声」に関して言えば、発声障害が発症する前に、「危険サイン」があります。
声枯れが頻発したり、「ストレス球」と言われるようなのどの異物感だったり、
首の前側のど仏の周りの喉頭筋が痛くなる、
強い声帯への刺激が 咳き込み を起こしやすくなったり、
常にのどがイガイガして気になって咳払いが多くなったり、
咽頭の炎症が常習化して、上咽頭炎 を起こしたりします。
このような兆候があるのであれば、自分の「発声」を見直すことをおすすめします。
自分の発声に関する「悪習慣」を理解し、新しい「感覚」を知ることで、
発声障害を未然に防ぐことができます。