機能性発声障害は心の病気ではないが、「発声の癖」を変える必要がある
2021/04/07
機能性発声障害 とは、ファイバースコープなどの検査で
声帯そのものはキレイなのに「声がだしにくい」症状がある事を指します。
痙攣性発声障害 や 過緊張性発声障害 という「診断名」がついた、または「疑い」と
耳鼻科等で言われても、それは全て「機能性発声障害」というカテゴリーに入ります。
声を出した時 常に「声が出しにくい」、「声が途切れ途切れになる」、「苦しそうな声質に変わる」わけではないが、
電話応対や発表などの「特定の場面」にだけ、「常時ではないが時々、症状が現れる」、というケースが多くみられます。
この浮動性によって機能性発声障害 は他人にも本人にとっても理解されにくい現状があります。
「精神的な病気」でも「脳の病気」でもありません。
ただ、
「心の緊張」が 「発声器官の緊張」に置き換わりやすい「身体の癖」を身につけてしまった状態といえます。
「ちゃんとやろう」と心が緊張するときの「発声の癖」なのです。
心の緊張を抑えようとして、確実にするために自分の 発声器官 や 呼吸器官 に力みを加えてきたのです。
私たちの意図的な「発声」は、
四肢を動かすための大きな筋肉への大脳の運動指令とは違い、
肩から上~顔面~頭部の感覚や微細な運動をつかさどる「脳神経」の指令下にあるため、
「力を入れている」感覚が全く無くても、わずかな緊張が発声器官や呼吸に対して大きく作用してしまいます。
「ちゃんと言おう」「第一声めからハッキリ出そう」「もっといい声できちんとやろう」というような思いがあると、
そのタスクを「確実に」こなそうとして一瞬、発声器官や呼吸機能が緊張してしまうのです。
発声器官や呼吸機能が緊張すると、下顎や舌、喉頭(舌骨)、咽頭、腹部、胸部などに生理的なレベル以上の「力み」を生みます。
このようにして固められた発声器官の外枠は、声帯の強い閉鎖となり「強い鳴り」を生み出し、一見「良い声」の
気がしてしまうのです。
そして、この固めた発声で一定の期間 確実に「出来ていた」ために、
今度はそれが無いと「ちゃんとした声に出来ないのでは」という感覚ができてしまうのです。
「ちゃんとやろう=確実に言おう」とする時ほど「固める」という悪循環の回路が構築されてしまいます。
そして厄介なのは生理的に
この固めた発声を土台にすると、 構音=ことばをつくる ことにも新たな回路を作り出してしまうことがあり、
そうなると「二重の癖」がついてしまうのです。
機能性発声障害の改善に向けて取り組むことは、
この「力を入れなければちゃんとできないのでは」という不安、「感覚ギャップ」をまずは取り払うことです。
発声器官や呼吸機能を緊張させなくても「声は出てくれている」、「このくらいで大丈夫だ」と感覚的に(身体的に)思えることがスタートです。
「声になる」最小の感覚を思い出してもらい、
「きちんと声を出そうとすることを止める」 ことから、正しい発声に戻る機能が戻ってくるのです。