発声障害の治し方は「声帯間の息漏れ」を改善することから
2020/11/03
発声障害は、
音声外来や耳鼻咽喉科クリニックなどでの「ファイバースコープ」による視診では
声帯そのものには 声帯ポリープ や 声帯結節 が無いことが多いのです。(重複している場合もあります。)
医療機関の考えは、短絡的に声帯はキレイなのだから「声は出るはず」となるわけですが、
検査時の「えー」とか「あー」とか単音を発声しただけの様子を一瞬見ただけでは、本当の会話時の声帯の様子は分かりません。
「会話」という高度なレベルとの実現の間には大きなギャップがあるのです。
生徒さんにも、「発声練習」ではいい声が出せるのに、実際の会話になると声が出しにくい、という訴えをよく聞きます。
これはなぜでしょうか?
私たちの会話時の「発声」は、実にたくさんの要素を同時に行っているからです。
「ことば」にするという事は、声帯そのものを息を声帯振動に変換させながら、
舌奥のわずかな動きによる 母音の変化 があります。
そして、それに加えて主に舌の上面では子音を作る、という 「構音(こうおん)」が行われています。
さらには、ことばによる高さの上げ下げ(イントネーション)という要素もありますし、
「息を持たせている」という呼吸の要素もあります。
これらが、瞬時に連続していくのですから、本当にすごい事なのです。
発声治療室レイクラブでの多くの臨床経験によって言える最大のアドバイスは
「ハッキリ言おうとしすぎない」ことです。
この「ハッキリ言おう」とすることでよく起こるのが「息をたくさん吐こう」とすることです。
これが発声障害の原因と言っても過言ではありません。
「息を吐く」ことで、間違いなく喉頭に力みが入ります。
喉頭に力みがわずかにでもあると、声帯は過剰に絞まるようになります。
また、「ハッキリ」ということは子音を「息を吐く」ことではありません。
「はい」という返事の際にも、直前に喉から強く息を吐いている癖のある人が多いのですが、それは要注意です。
大きな声を出す時にも強く「息を吐く」のではありません。ここがよく勘違いされるところです。
声の高さを上げる時も「息を吐く」ことに注意しなければなりません。
息が常に声帯にぶつかってくるのですから、声帯を瞬時に強く閉めなければならなくなります。声帯閉鎖にムラが出来てしまうのです。
結果、喉で強く息を吐きながら声を出す癖がつくと、 声帯間の息漏れ を起こすことにつながってゆくのです。
さらには、
「ハッキリ言おう」とすることでよく起こることが、かえって逆に第一声目に「息を止めて」しまうこともあります。
息をたくさん吸って、しっかりと息を止めてから息を逃がさないようにして言い出す、ことが習慣になってしまうのです。
すると、胸に力が入るようになることもあります。呼吸の支えが「胸に」なってしまうのです。
このように
「ハッキリ言おう」とする→「息を吐こうとする」→「声帯間の息漏れ」が進むと、
さらに子音のつけ方(構音)を工夫するようになります。
この工夫とは、軟口蓋の力み につながる、という事です。
このように、力みの連鎖は続いてしまうのです。
この負の連鎖を断ち切るためには、抜本的な 「声帯間の息漏れ」を先ずは正すことが重要です。
このためには、喉頭や咽頭、舌の力みや、下顎の力みなど、声帯の周りの発声器官を徹底的に緩めなければ
ならないのです。