声のかすれ・すぐひっくり返る声・声が割れる等は発声障害の初期サイン
2020/08/30
今月からボイストレーニングレッスンを開始した Kさん(男性・千葉県・30代)は、国家公務員。
働き盛りの若手のビジネスパーソンです。
初回のカウンセリング&体験では
「声のかすれ がひどく、少し長く話していると声が出ないと感じるほど疲れるし、仕事に支障が出始めている」
とのことでした。
「特にコロナのテレワーク期間後に、ますます声が出ないのでこのままではいけないと焦り、初めてボイストレーニングというものに来ました。」とKさん。
確かに、Kさんの声はかすれの度合いが重く、また、声がこもっており、正直ことばが聞き取りにくいほどでした。
またKさんは耳鼻科での受診の検査で声帯自体は異常が無かったことに加え
「栄養ドリンクを良く飲むのでカフェインの摂取のしすぎか、運動のし過ぎだと思うんですけど。。。」
と、自分の考えも述べて来たのですが、実際は違います。
明らかな発声障害の初期症状でした。
風邪で鼻がつまって「声枯れ」をおこしているわけではなく、声がかすれる、しかも声が出にくい、という症状は
機能性発声障害の初期症状なのです。
初期症状には、Kさんが訴える声のかすれの他にも
声が二重に割れる・ 急に声質が ガラガラ声に変化する
話していて頻繁に声がひっくり返る などの症状もあります。
Kさんの声質は 真の声帯振動が有る(有響性)声ではなくなっていたのです。
ハスキー声とも異なり、声帯の芯の鳴りではない、「こすれているような」声です。
また、Kさんの舌が異常に力みが見られる形状になっていたことも関係しているようです。
さっそく、初回の体験レッスンでKさんとまず行ったことは「裏声」を出す練習です。
身体を屈曲し、上半身を脱力させ、特に下顎と首裏と喉頭を緩めてもらいます。
すると、口内の舌も脱力し、重力で頭の方へ上がります。
その上半身逆さの脱力状態のまま、息を止めずに、静かに呼吸を繰り返します。
何秒かしてから、頭のてっぺんくらいで「声をひっくり返すイメージ」をもって
やさしく声を出してもらいます。
すなわち「裏声」が出るくらい声帯を緩めるのが目的なのです。
裏声は、まずは地声を作り出す声帯の内側の閉鎖筋が緩まないと出ません。
裏声は、声帯内部を閉めつける筋ではなく喉頭の内側から外へ連結する周りの筋を使って、
声帯の最上部の腱を伸展させる、ということです。
しかしKさんは 「裏声のつもり」で声を出しているのに、地声になってしまいます。
そのうち何回か喉頭をしっかり緩めたうえで繰り返すうちに、ある瞬間 パッと 裏声になりました。
これが出来ればしめたものです。
そして 上半身を立位に戻し声を出してみると、声帯本来の鳴りの有る「地声」が聞かれました。
「裏声」が出ることで、
声帯内部を閉める筋が強すぎて、声帯が過剰に閉鎖していた状態から瞬時に抜けだし
声帯閉鎖のバランスが戻ったのです。
Kさんはこの体験レッスンののち、間隔を空けずに今月内に3回チケットを購入し使い切りました。
レッスンに来るたびに、声のかすれ度合が減ってゆくのが聴覚的に分かりました。
体験レッスンから進み具合が早かったので、
3回のレッスンではさらに、Kさんの声帯に合った声の高さや良い共鳴の感覚を学び、
舌や軟口蓋などの他の発声器官にも力をかけさせない方法や
長文を話す時のコツまで、先の段階まで進むことが出来ました。
「一日仕事していても、声のかすれが気にならないほどです。スムーズに話せて調子がいいです。」とKさんは嬉しそうです。
「でもしばらくして、もし声の調子が悪くなったらまたレッスンに来ます」とKさんは言うので、
私は
「レッスンでやってきた事を思い出して、自分で声の調子を整えられるようになってください」
と答えました。