声帯結節の術後の「声の音圧」が出ない、語尾の「声が割れる」等の解消トレーニング
2020/07/13
超売れっ子人気声優さん、Tさんから久しぶりに「またレッスンを受けたい」との連絡をうけたのは、先月。
アニメに、ゲームに、ユニット活動に、ソロの歌手としても活動、
10年も声優業界の第1線を走り続けている多忙な彼女ですから、
また連絡が来たのはよっぽどのことなんだろうなと
こちらも覚悟して聞いてみると、
長年放置していた小さな声帯結節の切除術に踏み切り、声帯そのものはすでに完治していると医者から言われたのに、
「声の調子が悪い」と言うのです。
「声の音圧が出ない」「語尾にガサガサした声が混じってしまう」
「高音も以前のように伸びない感じ」
「声がブロックされる感じがする」
「大きな声で声が割れてしまう」
などと、今の現状を矢継ぎ早に訴えてきます。
一見、普通に話している分には綺麗な声なのですが、さすがプロの声優さん、
演技をしたときの自分の声のクオリティーが、自分で判ってしまうのです。
それでも、無理して頑張ってしまうと、
さすがに以前の彼女の声との違いに周りも気づき始めて、収録時に心配されてしまうそうです。
「以前と同じようにやっているのに、なぜ?」というもどかしさを抱え、久々にレッスンに来たのでした。
実際に声を聞いてみて気になったのは「声の共鳴」の部分と、「息の吐きすぎ」です。
さらに、舌先が細くなる形の、舌の力みでした。
声の共鳴が鼻孔横あたりの顔面に響いていません。すなわち声が口腔内で上顎(硬口蓋)に響いていないのです。
それは、声が舌の上を通ってたっぷりと口腔内に入って来ていないことを意味します。
また、軟口蓋の上がり方が弱いことも意味します。
その割に息の音が大きくマイクに入りすぎていて、声の芯がぼやけ、頑張っても音圧が出ないのもうなずけました。
軟口蓋が上がらず下がり気味になって、声をふさいでいるのは、舌の力みが関与しています。
発声時に先に「息を吐いてしまう」ことで、舌の真ん中部分が下がってしまっているのです。
すると、喉頭にも力がかかることになり、時々、ブロックされてしまう感じが起こります。
声帯に力がかかっているのに押しきってしまう、のどの痛い、嫌な感じです。
先ずは、舌の力みを抜いて、口の中でふわっとさせるトレーニングから入り、
一番口腔内に声が入って来るポジションを作ってから、声の通り道の確認をしました。
するとTさんの鳴りの良い声が顔面中央に良く響き、息ではなく声そのものがマイクに乗るようになりました。
Tさんは「うわー、ここ最近で一番声が出ている感じ!」と嬉しそうです。
3回目のレッスン時には、「心配していたマネジャーにも、声の調子が戻ったねと言われました!」
とのことです。
今流行りの「ウィスパーボイス」っぽい声は、実は声帯に大きな負荷をかけます。
声優を目指す若い世代の子たちに多く見られます。
声を出す時に「息を吐く」というのは間違いです。
息は全部声に変換されている状態が普通ですから、
強く息を吐きながら声を出すと、声帯を強く閉めることになるのです。
こうして、次第に息の量が増えると、声の芯がぼやけ、音圧が出なくなるのです。
Tさんは、さらに声の調子を上げたいと、時間を見つけてレッスンを少し続けることにしました。
きらきらとした澄んだ高めの声質に、毎回磨きがかかってゆくのが分かり、私もとても嬉しくなりました。