発声障害は「い」の母音列の言いづらさや「し」の構音障害から始まる

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発声障害は「い」母音列の言いづらさや「し」や「は」行の構音障害から始まる

2020/03/21

発声障害とは、非常に複雑難解な症状に見えますが、

その症状は多くの共通点もあり、典型的な起こり方があることが分かってきました。

 

発声障害は、特定の言葉の発音が言いにくかったり、

発音がひずんだりする構音障害が極度に進んだ状態と考えることもできます。

 

「肉声」部分である声帯開閉の障害とが合併したことで、

構音(子音)の間違ったやり方 が起こるようになったともいえるのです。

 

言いづらい、という感覚が次第に進むと、無意識に身体は工夫しながら発音するので、

やがて声帯にまで影響を及ぼすようになった状態にまで進んでいくのです。

 

あくまでも声帯の「開閉」に問題があるのであって、声帯そのものにポリープや結節等が無い場合が多く、

声帯表面はキレイと言われるのです。(発声障害の初期はポリープや結節も重複している場合があります)

 

 

声帯表面はキレイなのに、かすれ声やガラガラ声、喉締め声になるとは、なんとも不思議ですが、

これは、声帯の合わせるべき部分を使わず違うところを使っているためで、

正しい肉声の鳴りではないのです。

 

左右の声帯の本来合わせるべき接面に力が加わっている、とも考えられます。

これらは

ファイバースコープでの声帯の発声時の視診で、わずかに声帯間に隙間が見られることもあります。

または、声帯が見えないほどその周りが異常に狭くなっていることもあります。

 

なぜこのような声帯の開閉の障害が起こるかというと

呼気と声帯開閉のタイミングがずれている ことに原因があります。

きちんと声帯が使えていないので、呼気が声に変換されにくくなります。

 

息をのどで吐きだしながら発声する場合は

声帯が鳴らない「ささやき声」のようになりますし、

 

息を止め気味になっている場合は

声帯が過剰に絞まる「絞り声」のようになります。

 

このように土台となる「肉声」生成のところで、息と声帯の鳴りのタイミングが正しくないことが起こると、

構音(子音付加)を、のど全体で行おうとしてしまうのです。

 

ですので、

発音時、喉頭が上下どちらかにせり出すような動きがあったり、

下顎が異常に固定されたり、または下顎をねじるような動きがあったり

顔面が引きつったり、左右どちらかの口角が力んだり、

首が前にせり出したり、首裏に異常に力みがあったり、

見た目のうえでの違和感が起こっている様子がみられます。

 

特に、

舌前方が持ち上がる発音の「し」などにやりにくさが起こる例は多くみられます。

それを喉全体で発音しようとするので発音に時間がかかり、一瞬遅れたりするのです。

 

特に「言いづらさ」のなかでも多い症状の共通点は、「い」の母音列が言いにくくなる、ということが挙げられます。

 

「い」の母音の舌の形は、

母音の中でも一番口腔内で舌全体が持ち上がっている形なの ですが、

舌に力みがあるために持ち上がらなくなります。

加えて「S」という子音を付ける時には

舌と一緒に下顎も使って、息を強く吐きながら強く声帯を閉めることでカバーしようとするのです。

 

舌の力みは口腔内での舌の前後の動きにも影響を与えます。

舌が後方に引けなくなると「お」の母音が言いにくい という場合もあり、

「お」母音始まりの「おはようございます」や「お疲れ様です。」

などの挨拶の出だしが言いにくい、という訴えは多いのです。

 

昔ながらの情報で、声を出す時は 「息をたっぷり吐きながら出す」、「大声はお腹を使って息に乗せながら声を出す」ということが言われてきました。

これはハッキリ言って発声の弊害です。

息の吐きすぎは声帯開閉の障害が起こる近道です。

 

また

口形をハッキリ変えながら出す、とか、口をしっかり横に引いて、とか

普段の舌の位置は舌先を前歯の後ろに付ける、とか。これも間違いです。

これらを文字通り癖付けてしまうとかえって舌や下顎が力み、構音が正しく行われなくなることにもなりかねません。

 

次のことを発声時にちょっと意識してみましょう。

下顎は大きく開けなくてもよいので、口元を「ポカン」とする意識で緩ませることです。

 

舌先は歯の内側や硬口蓋のどこにも付けず、舌は口の中でふわっとしている 事が一番必要なのです。

 

口形もなるべく変えず、口角も緩めて一切わざと動かそうとせず、

ただ、うなっているくらいの気持ちで良いのです。声帯はそのくらいが一番鳴ってきます。

すると

声が温かい息と共に舌の上に来ているのが感じられるはずです。

そして口の中でふわっとしている舌を特に動かそうとしなくても、わずかに動き、子音は付いてすでに言葉になります。

このようにハッキリ言おうとしない、ことで声が鳴っているのを感じられるようになります。

これは発声障害を改善したい人にとても重要な事なのです。