高音が出ない・高音の声が割れる・高音がひっくり返るなどの歌の発声障害を改善するには
2020/02/04
歌において、以前はラクに歌えていたのに声の不調が過ぎた後、歌えなくなった、
という歌の発声障害を訴える方が多く来られます。
風邪や、アレルギー性鼻炎、気管支炎、咳喘息などと合併して、重い声枯れを起こした後、
声枯れ自体は治ったのに、高音域が出にくくなった、というのです。
高音域は、当然声帯のテンションも上昇しますが、
いかにして呼気とのバランスを取りながら、声帯の周りの器官を力ませないようにするかにかかっているのです。
声帯を強く閉めて息を強く吐き出すことでのみ高さを稼いでいた場合、声帯よりも周りの器官が
邪魔をして、もう高さが出せない、という感覚になります。
また、高音を出そうとすると声がひっくり返る、声が割れる、などの症状もよくあります。
この声がひっくり返るという現象は、呼気通過時に声帯が閉鎖し、目にも見えないほどの滑らかな弦の振動のような状態が一瞬乱れることを意味します。
スキーやスケートで滑走しているとき、一瞬でもバランスを崩すと転倒してしまうのと同じです。
声帯は左右から合わさり一対となって閉鎖するので、余計な力が加わって振動状態が一瞬でも乱れるとひっくり返るのです。
さらに、声帯に生理的なもの以上に力がかかり、声帯閉鎖時の接面、いわゆる振動面が厚くなっていると
二重に声が出たりします。これが声が割れる、という現象です。
この「二重声」は、本来の声帯閉鎖状態ではなく、倍音共鳴でもありません。
声帯に変な力がかかっており、生理的な閉鎖の状態でないことを表しています。
有名な「ホーミー」という遊牧民の民族歌唱法があります。これは仮声帯を使った特殊な発声法で、
低周波と高周波が同時に混ざるために響く「うねり」、まさに倍音共鳴ですが、
それこそ呼気調節の土台が完璧で、声帯に全く余分な力がなく音程調節ができるテクニックが無いと出来ないことです。
言うなれば、
以前出ていた声の高さが出ない、ということは声門にわずかな息漏れが起きていることを意味します。
息が抜けている状態で声帯をいくら強く閉めても、高さは出ません。
だからといって声帯を強く閉めればよいのかというとついには声帯周りの筋肉も過剰に閉まり、
もはや息が通りづらくなるほど閉まってしまいます。
声帯そのものの鳴る力、これが落ちていると、身体的に強く息を吐こうとしますが、
声帯振動率によって呼気を音響に変換できる効率性、声帯の呼気変換率が落ちているところに、
何をどう頑張っても身体がキツイだけなのです。
発声障害とは、
生理的なものではない、二次的な運動回路の形成によっていびつな声帯閉鎖の仕方になっていることが考えられます。
歌に関わらず、根本にあるのが、声帯の閉鎖の仕方の癖があるのです。
ゆえに声帯の呼気変換率が落ちてしまっているのです。
声帯という弦の接触面、最上部の膜のような接面を正しく使えていないことが考えられます。
(なので、声帯そのものには声帯結節や声帯ポリープが出来ていないことが多いのです。)
声帯の最も上部に位置する接面をきちんと使うと、息が漏れないので音程が変化する際、
呼気を強く吐くことに頼らなくても済みます。
音程の推移に息のロスがあるのに、声帯の緊張度が増す高音を出すことはかないません。
この一番根本的なところを改善することがポイントなのです。
歌とは、さらに普段の会話より呼気調節も大きくなりますので、非常に繊細なハイレベルな身体の技術なのです。