ことばの発音のやりにくさに発声障害が根底に潜んでいることも
2019/12/18
「で」と「な」行音が組み合わさったことばの発音になると、わずかに
声が潰れるような感じの声質に変化することに悩んでいたナレーションを勉強中のSさん(写真 都内在住 30代女性)は、
他の滑舌が良かったので、余計にその音の並びになると声質のゆがみが目立ってしまっていました。
根底に「え」の母音発音の時に舌の両脇に力みが入ってしまう ことが分かってきたのです。
また「い」の母音発音時に舌の力みが入ってしまう人は多く、
「い」の母音列になると発音がゆがんでしまう側音化構音もその例です。
特定の母音、または特定の音韻が発音しにくい、ということには、
実は、単なる滑舌の問題、構音障害で片づけられない場合もあります。
「い」と「え」の母音は特に舌の前方が上がる系の母音なので、
舌先やの舌の中央に力みが入っていると、言いにくさが起こるため、さらに頑張って発音せざるを得なくなり、
さらにその舌の力で喉頭に力がかかってしまい、中に位置する声帯も強く閉まってしまうのです。
この
言いにくいから頑張って言う → 声帯が絞まりすぎる → その発音時のみ息が止まる感じになる
悪循環になってしまうと、子音のつけ方を工夫するように なってしまうのです。
母音(声帯)の位置に近いところで(喉頭で)子音発音を近づけるように変化してゆくのです。
これはあくまでも無意識に起こります。発声器官が連携して生理的に少しでも発音しやすいようにしようとするのです。
しかしながら、どんなに工夫しても根本的な「やりにくさ」の感覚は感じてしまいます。
実は、細かくみてゆくと、この特定のことばの発音がしにくい、という症状は、
他のことばの並びの発音にもゆがみが起こっていることも多々あり、やはり、
根底にある 発声そのものの力みレベル を下げる必要があるのです。
根本的な「発声そのものの力みを取り除くボイストレーニング」とは、レイクラブが行っている
痙攣性発声障害や過緊張性発声障害などの
普段の会話が厳しいと感じる方に対するボイストレーニングです。程度の差こそあれ、アプローチは同じなのです。
さらに、
特に発音はゆがんでいないけれど、話していて何か話しづらい、
少し長く話しているだけでとても疲労感がある、
ことばがスムーズに出てこないことがある、といった
自分ではよく分からないけど、発声しづらい、ということが多少なりともある場合、
「舌の力み」や「顎の力み」、または「軟口蓋の力み」が関与していることもあります。
Sさんは、レイクラブのボイストレーニングで、発声根本から見直し、
「舌の力み」や「顎の力み」、または「軟口蓋の力み」が起こらない発声改善を行って来ました。
すると、今までよりも声の高さの音域が広がり、高いトーンの声のみならず
低いトーンの声質もとても柔らかい、のどを締め付けない声質に変化しました。
彼女の得意とする 自然な感じの番組ナレーション が以前よりも声が通っています。
自然なナレーションの中にも、文章の意味や内容がしっかりと届きます。
ことばの明瞭度が上がり、例のゆがみのあった特定の発音も他の声質にそろいました。
「ホント以前よりも格段にナレーションしやすくなりました!喋りやすいです。低めの声も以前より全然出やすいですね。やっぱり前は声帯を締めてだしていたのですね。」
とSさんは自分で声の変化にビックリしていました。
さらに
「以前よりも、自分のやりたいことが、そのまま反映できる感覚になってきました。ラクに声が出しやすくなったからですね。自分のやろうとすることがそのまま感情に乗ってくる感じ。」ととても嬉しそうです。
発声そのものに力みがあっては、細かいことばのニュアンスは伝わりません。わずかな感情の襞がそのまま声に伝わるようになってこそ、聴いている人はそれをことばでなくとも感じ取っているのです。