歌の発声障害は、土台となる発声そのものを見直そう
2019/11/07
「歌う」ことは「話す」ことよりもより高度な音声レベルと言えます。
話すことよりも、より大きな身体連動性を要するからです。
レイクラブでは、これまでに「歌」に関わる方たちの様々な悩みをレッスンで取り組んできました。
特に歌が好きな方は、歌う喜びが奪われてしまうので精神的なダメージが大きくなります。
プロ、アマを問わず音楽のライブ活動をしている方、
芝居、ミュージカルやオペラの舞台系俳優の方、
僧侶の方もお経以外の親しみやすい「ご詠歌」と呼ばれる歌を歌う機会が多い職業です。
よくある事例として、
声帯ポリープや声帯結節の手術の後、
声帯は治ったのに以前のようにラクに歌えなくなった
ということがあります。
声帯ポリープや声帯結節という発声器官自体の病変自体が「歌いにくい原因」の場合は、
回復後、柔軟な発声練習をすれば、歌える感覚はすぐに取り戻せます。
しかしそうでない場合、
発声障害 が潜んでいた、ということになるのです。
また、声帯ポリープや声帯結節にならなくとも、
病院や耳鼻科クリニック等の検査で、声帯ポリープや声帯結節がないのにも関わらず以前のように歌えなくなった場合
それは二次的な発声回路を形成してしまったことによる発声障害の発症ということなのです。
ある一定の音域になると声がひっくり返るようになった
歌うと短時間で声枯れを起こす、声のかすれ感が強くなった
緊張していないのに声がちりめん状に小刻みに震えて音程が取りづらい
歌うと喉が絞まる感じがして絞り出すようにしか声が出せない
高い声は出るが、中音域、低音域が音程が取りづらい、音程がブレる
ことばによって声が途切れたり、声が抜けたりする
‥などなど、数多くの悩みがあります。
このような状態になってしまった原因は、「歌う」時、
声帯閉鎖の強度が強い状態で音程を出す ようにやっていたことにあります。
息を強く吐くこと、声帯を強く締めることだけに頼って音程を取っている、ということです。
これは呼気調節の土台を伴いながら 声帯閉鎖をより緩ませて
なめらかに音程を移行させることが出来ていないとうことです。
個人差がありますが、歌の初心者は息をたくさん吐いて声帯を強く閉めただけでもある意味声の鳴りが良く聞こえることがあります。
そしてこれを良しとしてしまい長い期間このような「声の酷使」が続くと、いつの間にか
生理的な声帯閉鎖の範囲を超えて強く閉鎖するようになります。
風邪等により体調が悪化した時に頑張って歌ってしまったりすると、
短期間でも声帯閉鎖の状態が不安定に陥ってしまう事もあります。
歌の発声障害は、もともと何もしなくても声量があって、音域も広く、ラクラク歌えていた、という人にむしろ起こりやすいのです。
何もボイストレーニングをしなくても上手く歌えてしまったがために、
音程と呼気調節の土台との結び付けを作ってこなかったのです。
ノンビブラートで強く歌っている方は注意したほうが良いと思います。
また正しいビブラートがよく分からない、という方もまだ呼気調節が出来ていないと言えるでしょう。
子供のうちは声帯自体が柔軟で、身体のどこにも力みが入らないので、
喉頭にも力が入らずにノンビブラートで歌えるのですが、大人になるとそうもいきません。
必ず発声器官のどこかに力を加え、支点を取りながら強い声帯閉鎖の力を生みだしてしまうことになるのです。
これまでの多くの臨床により、歌の発声障害 があると、現在話すことが普通に出来ていても、
近い将来影響が出てくることもあることもあります。
会話そのものが困難になる明らかな重度の発声障害を発症した方で、
歌の発声障害が起こった後から急激に話しづらくなった、という方もいます。
「歌っていて何かしっくりこない」という違和感を感じたら、そのまま放置せずに、
土台となる発声そのものを見直してみてはいかがでしょうか?