発声障害を1回のみのボツリヌス注射と発声改善で乗り越えた声優
2019/07/28
ボツリヌス注射だけでは治らない発声障害
ボツリヌス注射は発声改善ボイストレーニングと併用することに意味がある
今年初頭、声帯へ初めて「ボツリヌス注射」を打ってから約1か月経過しているというOさん(20代女性・東京都在住)がやって来ました。
声が割れて二重になった声で、かなり掠れています。ボツリヌス注射を声帯に打った後の特有の声です。
Oさんのカウンセリング時の様子でかなり切羽詰まっていることが感じられました。
なぜなら、
Oさんは声優で、かわいいキャラクターの声や、ビジネス系のナレーションなどの仕事をしているからです。
声優として地道にキャリアを積んできた彼女に「発声障害」という非常事態が起こってしまったのです。
カウンセリング時に、今までのお仕事での録音物なども参考に聞かせてもらい、
Oさんの発声改善には今何が一番必要で、効果的かを考えます。
さらにOさんは
「声帯のボツリヌス注射も何か月かすると抜けてしまい、また打たなければならないと聞きました。
もう二度とボツリヌス注射は打ちたくないんです!その為には、根本から自分の発声を改善しなければならないと思い、こちらに来ました。」
と切実に訴えてきました。Oさんは、ボツリヌス注射を声帯に打っただけでは発声障害は治らないことを知っていて、
注射の効果が抜けてしまうその時を見越していたのです。
それから、Oさんとの発声改善ボイストレーニングは始まりました。
舌そのものの形状を変えるトレーニングや下顎と舌の運動性の「共同運動化」を断ち切るメソッド、
声域(声の高さ)を変化させる時に声帯を強く締めていかない方法などのトレーニングを
コンスタントに繰り返し行ってゆきました。
レッスン中Oさんは、さすが声優だけあってとても発声器官に対する感度が高く、自分の身体感覚に集中できました。
彼女の強い発声改善への思いが、私の一語一句を理解しよう、という前向きな姿勢になっていました。
今現在、5か月が経過し、ボツリヌス注射を打ってから半年を過ぎようとしています。
ボツリヌス注射の効果が抜ける半年目に声がどうなっているかが一つの目安です。
ここで、第一声目の声がつまる、のどが絞まり声が途切れるなどの発声障害の症状が元の通り強く出てきてしまう人と、そうでない人に分かれるのです。
声帯が強く絞まりすぎるのを、薬で止めている期間に、どれだけ正しい発声感覚に戻れているかにかかっているのです。
今まで通り何も変えずに同じように発声して、普段の生活習慣等も変えないでいると戻ってしまうのは必須です。ですので
正しい発声矯正を身に着けるためのワンチャンス期間として、
発症後間もない1回のボツリヌス注射を有効活用できるのです。しかし、この重要な期間にこのことを知らないと、その後注射を繰り返すしかないという選択になってしまうのです。
Oさんの声質は月を過ぎるごとに良くなり、高音域の声を出してもかすれが一切ない艶やかな声質に戻りました。
大事なことは、日々の生活習慣から注意して声をキープしていることです。声優のお仕事も、徐々に復活してきています。
写真のように、発声に大いに関連する首裏や舌骨筋のマッサージの方法も学び、身体の状態から整えることも学びました。
Oさんは、この半年間レイクラブで学んだボイストレーニングの主旨を完全に理解し、実践していったのです。
Oさんは
「レイクラブで発声のことをいろいろ学べて本当に良かったです。知らないでいたら多分また発声障害に戻っていたと思います。
最近は声の仕事の時も以前とは違う感覚になったのを実感します。のどを締めて出していた高音も軽く出ています。」
と嬉しそうに語ってくれました。
「声の仕事だけでなく、自分の得意なイラストや、アクセサリークラフトの道もどんどんやっていこうと思います!」
と人生に前向きになったOさん。
さらに涙ながらにこう話してくれました。
「発声障害になって、発声障害で苦しんでいる人の気持ちが痛いほど分かりました。私のこの体験も発信していこうと思います。」