痙攣性発声障害と過緊張性発声障害の混合タイプの症状の改善

本日の生徒インタビュー、N・Kさん（奈良県在住、40代女性）です。

発声治療室レイクラブに、月１，２回の無理のないペースで奈良県から通学しています。

初来校から1年半経過し、会話なら普通に聞き取れるほどの声量で滑らかに聞こえるようになりました。彼女は天然の可愛らしい声質で、大人かわいい特徴的な話し声です。

しかしレイクラブに来た当初、喉の締めつけ感が強く、絞り出すようにして出す「かすれ声」で、のどの奥のほうにこもりながら、やっと聞こえるほどの声量でした。

さらにことばの途中で声が途切れ途切れになり、詰まり方も重度でした。

まさに痙攣性発声障害と過緊張性発声障害の症状を併せ持った、混合タイプの発声障害だったのです。

 

発症までの原因は明らかでした。聞けばKさんは4年前、長年の夢に挑戦しようと思い立ち大阪のある　声優・ナレーションの養成所　に通い始めたそうです。声を酷使し始めて発声障害を発症するまでそんなに時間はかかりませんでした。

入所そうそう養成所特有の「腹から声を出す」「もっと大きな声で」とばかりに、お腹に手を充てて強く息を吐きだしながら大声を出す発声練習や、滑舌練習の名目の早口ことばや、演技台本のセリフなどをやっていました。

そして半年を過ぎたころ、声の異変　を感じたといいます。声がかすれ気味になり、文の途中で声がつまり、なめらかに文章一文が読めない、と感じたそうです。

 

地元の耳鼻咽喉科で声帯をファイバースコープで診察したところ、小さな声帯ポリープができていました。切除するほどでもない小さな声帯ポリープのため、ステロイドでの保存治療で大丈夫だろう、とのことでした。

しばらく月日が経過して再受診したところ、小さな声帯ポリープは消え、声帯そのものは綺麗になったことを確認したのですが、話しづらさの症状はそのまま残存し、Kさんは「発声障害」を発症していることに気づいたのでした。

 

Kさんは声帯そのものに注射やメスを入れることは選択肢になく、地元の耳鼻咽喉科にいる言語聴覚士の訓練を何回か受けたそうですが、全く良くなる手ごたえがなく絶望したそうです。しかしWeb上で「発声治療室レイクラブ」を見つけ、改善の希望を得たのです。

Kさんとのレッスンでまず取り組んだのが　舌の力みを取ることでした。口内で細く長く縮こまり、下に引っ張ろうとする舌の力を起こさぬよう、舌を緩める内容のレッスンを行いました。それだけでも、声のつまり、途切れは劇的に改善しました。

 

また、養成所時代に身についた負の習慣「お腹に力を入れる」ことをやめさせることを行いました。これが「呼吸の力み」となり、喉頭に力を加えてしまう最大の原因です。過緊張性発声障害にはこの要素が強いのです。

 

ｋさんは言います。「勝手にお腹、みぞおちに力が入ってしまうんです。自分でもお腹やみぞおちが固くなっていると、胸や肩にまで力が入るのが分かります。」

身体の習慣とは根深いもので、初めは運動的に意識してやっていたことが、無意識に身体が反応して先回りしてしまうほどの運動記憶になってしまうのです。

また、発声時にお腹に力を入れている習慣があると、息を吸う際「喉頭が緩んだ状態」にならなくなります。

吸気時に声帯が内転したところで発声時に声帯に力を加えてしまう、二重に喉頭を締め付けることになるわけです。

 

この状態を改善するために、写真のように「肋骨の下方横あたり」を手で触れて、お腹に力を入れずにここが広がるように吸気する訓練をしました。すると、一番横隔膜が押し下がり、吸気量が増えるのと同時に、声帯も一番開大するのです。

ここから、声帯下方全体を強く締めすぎず、本来の生理的な声帯の粘膜上部のみを閉鎖するためには、息を強く吐き出しながら発声しないように気を付けなければなりません。これはレイクラブ独自メソッド「舌根弛緩止気発声法」を行います。

 

ｋさんは地道にレッスンを積み上げてゆき、喉が閉まりすぎなくなったので、声質も本来に戻り、さらに声がこもらずに声量も出てきました。普段の会話なら全く自然に聞こえます。

ただ、まだ電話応対になると途端に声が出なくなる、と言います。また、騒がしい場所や外での会話だと大きく声を出さなくては、と頑張ってしまい、喉が閉まってくるといいます。さらなるその先を目指して研鑽を積むところです。

 

Ｋさんは、「絶対に声は戻れると確信しています。あともう少し、という感じです。」と語ってくれました。

マンツーマンレッスンでのｋさんは真っすぐで、とても集中しています。自分の声と向き合い、身体を研ぎ澄ませながら、レッスンそのものを楽しんでいるようです。

そんなｋさんにレイクラブはどこまでもお応えします！